SNSが普及した現代、多くの人が「日常」を伝えるために自撮り写真をアップし、時にはどうでもいい内容を投稿しています。食事の写真、服装の紹介、さらには何気ない一日の感想まで…。中には詐欺まがいのアカウントもあり、SNSを「生きる場」として捉える人々が増えてきました。そんな中、なぜ人はSNSで自分の「日常」を伝えようとするのか。SNSを中心に生きることは、人間らしい生き方なのでしょうか?
この問いについて考えてみると、実は私たちの「本質的な欲求」が深く関わっているのかもしれません。
1. 自分を「認識」してほしいという欲求
人間は本質的に社会的な生き物であり、他者に自分を認識してもらいたいという欲求があります。SNSでは、フォロワーや「いいね」を通じて、他人からの承認を得ることができます。これは現実世界での会話や表情から得るフィードバックに似ており、「自分はここにいる」という存在証明の一環です。
SNSで日常を投稿することは、周りに対して「自分はこういう人間だ」という自己像を発信する行為でもあります。他者からの反応を通じて、自分の存在が確認できるのです。これは自己肯定感や自己認識に深く結びついており、現代のSNS社会ではこれが強く刺激されています。
2. 共感を得たい、つながりを感じたい
人間は孤独を嫌い、他者とつながりたいという欲求を持っています。日常の些細な出来事や自分の感じたことをSNSに投稿することで、共感を得たり、他の人との交流を深めたりすることができます。
SNSで自撮りを投稿するのも、単なる「見せびらかし」ではなく、他者とのつながりを求める行動の一部です。「素敵ですね」といったポジティブな反応を得ることで、自己の評価が上がり、より深いつながりを感じることができるのです。
3. 見せびらかしは本能?
自慢することや、他者に優位性をアピールすることは、動物の本能に近い部分があります。例えば、孔雀が美しい羽を広げてアピールするように、人間も自分の魅力や優れた部分をアピールしたいという本能が存在します。
SNSはそのための完璧な舞台です。豪華な食事、高価なブランド品、旅行の写真などを投稿することは、他者に自分の生活の「豊かさ」を見せつける手段であり、それを通じて「自分は価値のある人間だ」というメッセージを送ることができます。
これは、競争社会において重要な役割を果たしています。他者からの評価を得ることが、その人のステータスや価値に直接影響を与えるため、見せびらかす行動は実は理にかなっていると言えるでしょう。
4. 詐欺や虚偽の投稿の背景
一方で、SNS上には詐欺まがいの投稿や虚偽の情報も存在します。これもまた、自己を過大評価させたいという欲求の一環です。本当の自分以上のイメージを作り上げることで、より多くのフォロワーや承認を得たいという欲望が人を突き動かすのです。
この現象は、SNSの匿名性や顔の見えない関係の中で特に顕著です。現実世界では得られない注目や評価を、仮想空間で手に入れようとすることが詐欺や虚偽の動機となります。
5. 自然を感じるよりも、自慢が人間らしい?
私たちが自然を感じ、静かな場所で過ごすことに「人間らしさ」を感じる一方で、SNS上で自分をアピールし、他者からの反応を求める行動もまた人間らしいのかもしれません。自己表現や他者とのつながりを求める欲求は、人間の基本的な本能であり、SNSはそれを強化するツールとなっています。
一見、「自然に戻る」ことが人間らしいと思われがちですが、実は競争や見せびらかし、他者との関係を築くことも人間らしさの一部と言えるでしょう。SNSは、その人間の本質的な欲求を満たす新しい「場」として、現代社会において欠かせない存在となっているのです。
結論
人がSNSで「日常」を伝えようとする理由は、自己表現や他者とのつながりを求める本能に深く根ざしています。自然を感じることと同様に、自分を見せつけ、認識されることもまた人間らしい行動なのかもしれません。SNSは、その行動をさらに拡張し、デジタルの世界で自己を表現し、他者とのつながりを築く場として機能しています。
結局のところ、SNSでの自撮りや日常の投稿は「見せびらかし」ではなく、人間が本来持つ「社会的な存在」であることを証明する行為なのかもしれません。